シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調 作品47 / ハイフェッツ, ヘンドル, シカゴ交響楽団

2018.08.12 Sunday

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    氷上の夜は滑るようにいつまでも続く。まるで朝を忘れてしまったかのように。

     

    月明かりは緩やかに地に降る。そこに息づく夜の動物たちを優しく照らし出す。人のいない時間のうごめき。木から木へと飛び交う羽の音と鳴き声。地を駆ける足音。仲間との交信。小さな生命たちによる歓喜の時。我らが時と光と謳歌する生命の息づかいは小さくもにぎやかに、夜の大地を覆い尽くす。

     

    ありとあらゆる野性の交歓。何者にも邪魔されず、ただ本能のままに命を作り出し、そして命を育む。飽和する命。はかなくも鼓動は確かにそこにあり。

     

    森よ、その喜ばしい時を静かに守れ。泉よ、滑らかなる鱗の煌めきを決して誰にも知らせるな。

     

    それでも忘れ去れたはずの朝は、やがて容赦なくその時にとどめを刺す。そして潜まれる呼吸たち。またすぐに訪れる月光の時。その元に広がるざわめきを夢見て、陽射しの影で眠れよ命。
     

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    リスト:ピアノ協奏曲第1番&第2番 / リヒテル, コンドラシン, ロンドン交響楽団

    2018.08.04 Saturday

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      岩のように硬く、羽のように軽やかに。変幻自在、そしてスクエアな演奏はリヒテルの真骨頂と言ってもいいのかもしれない。そしてその多彩なピアノの音色を引き出すオーケストラも雄弁に奏でる。

       

      リストの協奏曲はバレンボイム盤で所有していたのだけれども、正直なところ、その演奏にはさほどの魅力を見出せなかった。むしろ「リストはまだ自分には難しいのではないか」との思いを抱いたほど。

       

      ところがこのリヒテル盤を再生し始めた瞬間、「これだ!」と文字通りの衝撃が自分の中を突き抜けた。バレンボイム盤ではどこか霞んで見えたピアノの旋律も、リヒテル盤だと鮮烈に聞こえてくるのだから不思議なもので。

       

      それはやはり自分とリヒテルとの相性が良いのか、純粋に好みの問題なのか。リヒテルの見えない指の動きに耳が釘付けになるのだから、その両方以上のものがあるのだろう。

       

      東西が分断されていた歴史の中で、西側での演奏が許されなかったというリヒテル。もしその時にドイツ・グラモフォンが東側に渡ってリヒテルの録音をしていなかったならば、このような鮮やかな演奏も記録に残ることはなかったのかもしれないと、今となれば歴史が動かしたとも言えるありとあらゆる情熱が、ここには込められているのかもしれない。

       

      そう考えると、リヒテルという歴史的アーカイヴを今の時代に平和裡に聴けることは、実は贅沢中の贅沢を味わっているのではないかと心から思わせる、極上の時がここにはある。

       

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      リスト:ピアノ協奏曲第1番・第2番

       

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      ブラームス:交響曲第4番 / マゼール, クリーヴランド管弦楽団

      2018.07.28 Saturday

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        自分がクラシック音楽をなんとなく聴けるようになった頃に、「ブラームスの4番なんかは聴きやすいからお勧めするよ」と知人に教えられ、取りあえず入った店舗にて廉価で売られていたCDを購入したのがこのブラームス全集。もちろん、ブラームスの曲も知らなければ、当然のように指揮者のマゼールの名前などは聞いたこともない。安かったから買ってみた。ただそれだけのこと。

         

        そこからまずは真っ先に第4番を聴き「ふむ、なるほど」と言ったような印象を受けた記憶がある。

         

        その後も何度となくCDラックから引っ張り出しては、この第4番ばかりを聴いていた。知らずうちに魅せられていた理由は、何よりも主旋律がはっきりしていて分かりやすいことと、楽曲そのものが適度にロマンティックで、映画音楽であるかのように肩肘張らずに楽しめることにある。オーケストラの主たる楽器を、旋律の主人公にうまく割り振って使って書かれているあたりも、今なら魅力の一つだと言えるかもしれない。

         

        その後、名だたる指揮者やオーケストラのブラームスを聴いてきたけれども、結局は最初に聴いたこのディスクに戻ってくる。決してその他のブラームスが気に入らなかったわけでもなく、なんとなく愛着が湧いてしまっただけのこと。クラシック音楽、それも一つの楽曲の一つの演奏に愛着が湧くなどと言うことがあるものなのだと、実は今これを書いている時点で少々驚いている。

         

        録音が良く、過剰な残響もないために楽器の見晴らしが良く、自分にとってとても聴きやすいことが、この演奏を愛する理由。何よりも、重厚過ぎないオーケストラのバランスの良さが一番のツボ。ほどよい軽妙さから引き出される聴きやすさが、自分にとって最大の魅力なのだ。
         

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        ハイドン:ヴァイオリン協奏曲 / カルミニョーラ, シャンゼリゼ管弦楽団

        2018.07.15 Sunday

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          ディスクを再生させた瞬間に空気が変わる。18世紀の世界へようこそ。

           

          流麗という言葉では足りないほどにブリリアントな響きを聴かせてくれるヴァイオリンの調べと、軽妙な楽団のアンサンブル。初めて聴いた瞬間から耳をがっしりと持って行かれた美の中の美。

           

          ハイドンと言われても、あまり自分の印象には残らない交響曲が沢山ある程度の印象だったものが、このヴァイオリン協奏曲集を聴いてイメージが一転してしまった。「なんと美しくも甘く、そして凛とした旋律を描く作曲家なんだ!」と。

           

          それは弾き振りをするカルミニョーラのテクニックに寄るとことも大きいのかもしれない。いや、この響きにテクニックと言う単語はふさわしくない。譜面に描かれた設計図を音として立体化させる際に、何かの魔法をかけているかのごとく、その音をリアルなものとして伝えてくれる演奏家。

           

          そのヴァイオリンの響きには、耳に刺さる雑味が全く含まれておらず、甘い喉ごしの甘露のように耳に柔らかくもくすぐったく流れ込む。バロックの響きとはこう言うものなのかと改めて教えてくれるかのような、シンプルかつ歯切れのよい音の立て方。

           

          ついつい自分の興味が向きがちな大がかりな交響曲とは異なり、柔らかなその響きで気分を豊かにしてくれる演奏。クラシック音楽における「リッチ」さとは、何も音の塊だけを意味するのではなく、小さな空間に響き渡る音にも共通してある心地よさであると再認識した次第。巨大なダイヤモンドの煌めきもクラシックであるのならば、小さな真珠に反射する光もまたクラシック。これは思わぬ掘り出し物でありました。
           

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          (2018-06-20)