ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番《皇帝》 / グルダ, シュタイン, ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

2018.06.09 Saturday

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    ベートーヴェンの交響曲をどこかイージーリスニング的に聴き流せるようになってきたら、次はピアノ協奏曲へ。交響曲の見本市的な楽曲群とはまた趣が異なり、ピアノと言う単体かつ雄弁な楽器が主役を張ることで、曲にある種の緊張感が生み出される。

     

    ここで聴くことの出来るグルダの演奏は、リリカルかつダイナミクスあふれるもの。その振れ幅の大きさで、楽曲を雄大に歌い上げる。時にピアニストの性質に左右される神経質なまでに研ぎ澄まされた演奏ではなく、非常に滑らかな歌心を持った演奏であると言える。それは懐の広い、馥郁たる音そのものとしても感じ取ることが出来る。

     

    ベートーヴェンの交響曲に共通する骨格の明確さと、単独で歌い上げるピアノとの組み合わせとが相まって、どこか扉を一つ開けたような爽快感まで覚えるほど。

     

    自分がピアノ協奏曲に求めるものは、その爽快感に繋がるカタルシスであり、それを十二分に堪能出来る演奏がここにはある。

     

    そしてもちろん忘れてはならないのは、ウィーン・フィルによる芳醇なオーケストラの響き。ピアノが主役になりがちなピアノ協奏曲にあって、ここではオーケストラもまた主人公であり、楽曲に対するお互いの解釈の高さが相乗効果につながり、演奏を高い次元に押し上げていることが手に取るように分かる。

     

    ピアノとオーケストラのその両方の魅力をじっくりと味わいたい際に引き出す、解釈のしやすい名演として、常に手元に置いておきたい作品であることは間違いない。

     

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    チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 / リヒテル, カラヤン, ウイーン交響楽団

    2018.05.26 Saturday

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      リヒテルとカラヤンが組んだ、この1962年録音のチャイコフスキーがたまらない。

       

      全てにおいて雄弁な演奏であるのにもかかわらず、この上なくスポーティー。緩急自在に曲をコントロールしているのはカラヤンの力なのかリヒテルの演奏なのか。もちろんそのどちらもそれぞれに寄り添いながらも、お互いの主張を一歩も譲らない雰囲気まで漂う演奏が、これまた聴き手にこの上ない緊張感とカタルシスを与える。

       

      ピアノ協奏曲なのでもちろん聴き所はリヒテルのピアノ。これがとにかくキメる。キメッキメ。歯切れの良さに打鍵のバリエーションの豊かさが加わって、向かうところ敵なしの演奏を聴かせてくる。ピアノが休んだ瞬間、音が箸休めに聞こえてしまうほどに、その主張は激しい。

       

      何よりも一番の聴き所は、これでもかと言わんばかりにキメる縦の強さ。このキメの強さはテクニカルと称するよりも、むしろメカニカルなのではないかと思えてしまうほど。滑らかに歌う箇所においても、決して横滑りすることなく、必ず縦の線を印象強く残している。しかしそれは決して機械的と表するものではなく、曲を美しく歌いながらの縦への明瞭な意識が奏者の中に存在しているからなのだろうと。

       

      もちろんオケとの噛み合い方も明快かつ力強い。特に第3楽章で味わえるこの歯車の見事な噛み合わせは、ピアノ協奏曲界のピタゴラ装置ではないかと。

       

      曲が終わった瞬間に思わず溜め息と拍手が出てしまう濃厚な35分間。名演という表現が決して大げさではない、美しさと力強さを誇っている。それは録音から60年が経とうとしている今においても、何も色褪せるものではない。

       

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      Rachmaninov: Piano Concerto No.2 / Tchaikovsky: Piano Concerto No.1

       

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      チャイコフスキー&ラフマニノフ: ピアノ協奏曲, 他 / スヴャトスラフ・リヒテル

       

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      シューマン&グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 / ルプー, プレヴィン, ロンドン交響楽団

      2018.04.21 Saturday

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        楽曲にもよるのだろうけれども、ピアノ協奏曲なるものは、個人的にはピアノという素晴らしい音のダイナミックレンジ、そしてポテンシャルを持った楽器と、オーケストラとのバトルであると常々感じながら聴いている。オーケストラを引き立てるのも、また脇役にさせるのも、全てピアノという1台の楽器のコントロール下にあると言うのは、何とも痛快な事ではないかと。

         

        身体に叩きつけられるような音から、とろけるようなロマンティックさで響かせる音まで、1台の楽器であるのにその幅は広く、また、美しい。聴いている身体が完全にピアノと一体化する瞬間がそこここにあるのも、聴いていて耽美な気分に浸れるのも、心と耳とを完全に音楽に引きずり込ませる力を持つ、実にデーモニッシュな楽器であることよ、と。

         

        10本の指から繰り出される音は、雨だれにも嵐にもなる。鍵盤に存在する以外の音は出せないという制約があるにも関わらず、楽器の存在そのものがドラマティックであり、ダイナミックなのは、本当に悪魔の楽器としか言いようがない。

         

        そこでこのルプーのピアノによるシューマンとグリーグのイ短調作品のカップリング。正直どちらがどちらなのか、時に分からなくなるくらいにまだまだ聴き込みが甘いのだけれども、一つだけ確実に言えることは「ピアノはやっぱりカッコいい楽器だわ」と。

         

        ルプーのピアノは鍵盤ががっちりと指に吸い付くタイプの音では決してない。鍵盤と指との隙間に、何かしらの音の「間」が存在している音だと思わせるところも、またロマンティックではないかと。完全硬派な音ではなく、かといって軟弱な音でもない。絶妙なバランスで耳が喜ぶ演奏を聴かせてくれるのがこのルプーという人なのではないかと、超絶有名なこの2曲から感じ取ることができる。

         

        もちろんロンドン交響楽団の演奏も、ピアノに負けじとその存在感を主張するのだけれども、やはり自分の耳ではこのピアノの前においては、その引き立て役になってしまうあたりが、ピアノ協奏曲の面白いところだと思うのだ。

         

        聴き所が多くピアノ協奏曲への入門としてはうってつけなこのカップリング、今後も愛聴盤であり続けるだろうと。

         

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        シューマン&グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調

         

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