ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 / アシュケナージ, ハイティンク, ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

2018.06.30 Saturday

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    美なるものと甘さたるものは混在ではなく両立するものなのか。その二つの螺旋が組み合わされて作られる演奏は、美なるものなのか甘さたるものなのか。この音楽には、その禅問答への答えが十分に含まれている。

     

    悔しいことに、美を語るにおいて、自分の美に対する経験値はまだまだ少なすぎる。美しいと捉えることは出来たとしても、それは正面から投影した光に弾き出された像を見ているだけであって、同時に生み出されている陰影にまで目をやることはまだまだ難しい。

     

    それでも深い彫刻であれば、影を見出すことは辛うじて出来る、いや、出来ていると信じたい。その刻みの深さがアシュケナージのピアノによって浮き彫りにされる旋律であって、そこに光を当て、包み込むように柔らかく寄り添うのがオーケストラのふくよかな響きではないかと。それらは組み合わせではなく、あくまでも螺旋なのだ。

     

    その回転しながら進み行く様が、美であり甘さ、粋たるものと表現してもいい、を組み上げ、また音をつかさどるものではないかと。回転が進むにつれ二者は滑らかに融合し、決して分離することのない音像を描き出す。原子から引き出された糸は、また別の原子へと繋がり、そして強固たる分子を生み出して行く。それはたとえ強固であっても、音という柔軟な素材を使うことによって、形ある一つの楽曲として成立して行く。

     

    音楽なる芸術は全てが様々な音で繋がって行く。そのような当然のことを再発見させられるようなこの螺旋の彫刻は、甘美という単語を用いて、自分の耳の中へと柔らかく滑り込むのである。

     

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    ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番《皇帝》 / グルダ, シュタイン, ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

    2018.06.09 Saturday

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      ベートーヴェンの交響曲をどこかイージーリスニング的に聴き流せるようになってきたら、次はピアノ協奏曲へ。交響曲の見本市的な楽曲群とはまた趣が異なり、ピアノと言う単体かつ雄弁な楽器が主役を張ることで、曲にある種の緊張感が生み出される。

       

      ここで聴くことの出来るグルダの演奏は、リリカルかつダイナミクスあふれるもの。その振れ幅の大きさで、楽曲を雄大に歌い上げる。時にピアニストの性質に左右される神経質なまでに研ぎ澄まされた演奏ではなく、非常に滑らかな歌心を持った演奏であると言える。それは懐の広い、馥郁たる音そのものとしても感じ取ることが出来る。

       

      ベートーヴェンの交響曲に共通する骨格の明確さと、単独で歌い上げるピアノとの組み合わせとが相まって、どこか扉を一つ開けたような爽快感まで覚えるほど。

       

      自分がピアノ協奏曲に求めるものは、その爽快感に繋がるカタルシスであり、それを十二分に堪能出来る演奏がここにはある。

       

      そしてもちろん忘れてはならないのは、ウィーン・フィルによる芳醇なオーケストラの響き。ピアノが主役になりがちなピアノ協奏曲にあって、ここではオーケストラもまた主人公であり、楽曲に対するお互いの解釈の高さが相乗効果につながり、演奏を高い次元に押し上げていることが手に取るように分かる。

       

      ピアノとオーケストラのその両方の魅力をじっくりと味わいたい際に引き出す、解釈のしやすい名演として、常に手元に置いておきたい作品であることは間違いない。

       

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      チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 / リヒテル, カラヤン, ウイーン交響楽団

      2018.05.26 Saturday

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        リヒテルとカラヤンが組んだ、この1962年録音のチャイコフスキーがたまらない。

         

        全てにおいて雄弁な演奏であるのにもかかわらず、この上なくスポーティー。緩急自在に曲をコントロールしているのはカラヤンの力なのかリヒテルの演奏なのか。もちろんそのどちらもそれぞれに寄り添いながらも、お互いの主張を一歩も譲らない雰囲気まで漂う演奏が、これまた聴き手にこの上ない緊張感とカタルシスを与える。

         

        ピアノ協奏曲なのでもちろん聴き所はリヒテルのピアノ。これがとにかくキメる。キメッキメ。歯切れの良さに打鍵のバリエーションの豊かさが加わって、向かうところ敵なしの演奏を聴かせてくる。ピアノが休んだ瞬間、音が箸休めに聞こえてしまうほどに、その主張は激しい。

         

        何よりも一番の聴き所は、これでもかと言わんばかりにキメる縦の強さ。このキメの強さはテクニカルと称するよりも、むしろメカニカルなのではないかと思えてしまうほど。滑らかに歌う箇所においても、決して横滑りすることなく、必ず縦の線を印象強く残している。しかしそれは決して機械的と表するものではなく、曲を美しく歌いながらの縦への明瞭な意識が奏者の中に存在しているからなのだろうと。

         

        もちろんオケとの噛み合い方も明快かつ力強い。特に第3楽章で味わえるこの歯車の見事な噛み合わせは、ピアノ協奏曲界のピタゴラ装置ではないかと。

         

        曲が終わった瞬間に思わず溜め息と拍手が出てしまう濃厚な35分間。名演という表現が決して大げさではない、美しさと力強さを誇っている。それは録音から60年が経とうとしている今においても、何も色褪せるものではない。

         

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        Rachmaninov: Piano Concerto No.2 / Tchaikovsky: Piano Concerto No.1

         

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        チャイコフスキー&ラフマニノフ: ピアノ協奏曲, 他 / スヴャトスラフ・リヒテル

         

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